宝寿寺の龍





 むかしむかしのお話しです。
日本中をあちこち旅していた一人の男が 江黒のあたりに来た時 きゅうに病気になってしまい近くの宝寿寺という寺にお世話になりました。
 お坊さんのあたたかい看病でどんどん元気になっていきました。
 以来、この土地が気に入り ずーっと住むことになりました。
 その男は益鷹(ますたか)と名のり 畑仕事を手伝ったり 人から頼まれた絵馬をかいたりして暮らしていました。
 春・夏・秋・冬といつのまにか時は過ぎ すっかり おじいさんになってしまった益鷹は もうすぐ 別の世界に 行くような気がして なりませんでした。
 それからというもの 益鷹は 一番得意な龍の絵をかきたいと思い立ち 境内のお堂の天井に 心をこめてかき始めました。
 ある時は食事もとらず またある時は筆を持ったまま 一番鳥の鳴き声を聞いたりするほど その絵に うちこんでいました。
 そして とうとう完成すると 満足そうな顔をして 静かに息をひきとりました。
 この龍の絵は まるで生きているようで じっと見ているとこわいくらいでした。



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