須賀沼の主


  むか〜し、大輪村と須賀村という二つの村があってな、その村の境に須賀沼というふしぎな沼があったそうじゃ。
 沼はふたつに分かれておっての東西の道をへだてて、南側を南沼、北側を北沼と呼んでおったんじゃ。
 沼にはフナやナマズやウナギがたくさんおって、それはもう魚の宝庫だったんじゃ。
 ある時、大輪村の宝光寺という寺にとみ坊主という坊さんが住んでおったんじゃ。
 とみ坊主は、その須賀沼に目をつけてな村人から頼まれた仕事は、ちーともせずにきょうは北沼、あしたは南沼といったぐあいに、かわりばんこ魚をとっては毎日のんびり暮らしておったんじゃ。
 あんまり、たくさん魚がとれるので、とみ坊主の魚とりの熱はますますあがるばかりで、大輪村の人たちは、ただただあきれるばかりだったんじゃ。
 ところで、南沼には大蛇、北沼には大亀がその沼の主になって住んでおったが、とみ坊主があんまり自分の子分をとってしまうので、少しこらしめてやろうと大蛇と大亀が相談したんじゃ。
 そしてある日、とみ坊主はそんな事も知らず、いつものように須賀沼でのんびりとつりをしておったんじゃ。
 すると突然、大蛇と大亀が沼からドドーと出てきてな、腹の底にひびくようなでっかい声で「ここの魚はおれたちの遊び友達だ、魚をもうとるな、いいかわかったか坊主」そう言って沼に消えてしまったんじゃ。
 さあ、とみ坊主のおどろきようはたいへんなものじゃ。なにしろ今まで見たこともない、沼の主が現れたんじゃから、腰ぬかして命からがら逃げ帰ってきたんじゃ。
 それからというもの、とみ坊主はこわくてこわくて、須賀沼で魚をとることは二度としなくなったんじゃ。
 それ以来、だぁれも須賀沼で魚をとる者がいなくなって沼は前よりも、もっとたくさん魚がおるようになったんだと。


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